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わが国の高等教育機関における金融教育プログラムの組成に関する研究

竹本 拓治
京都大学

わが国で金融分野における規制緩和政策が採られてから10年になる。この10年で消費者は金融商品やサービスの選択肢が広がった反面、自己責任原則という方針によりそれらの内容を理解する必要に迫られた。しかし英国、米国と比較して、学校教育プログラムとしての金融教育が遅れているわが国では、そのような教育を受けていない国民が近年多くのトラブルに巻き込まれている。このような現状に対処するための重要な方針は、問題が発生しないための対策を、より少ないコストで行うことである。それはつまり問題を発生させている原因の除去が政策的に重要であることに他ならない。そのような観点から、当論文では当該問題の根本的な解決を短期的な経済政策に求めるのではなく、英国や米国のように学校における金融教育を柱とした中長期的な教育政策に求める。

 

近年の金融に関する消費者問題は倫理観や道徳心に欠ける内容のものが多い。そこでわが国における金融教育の定義として、金融教育を英国同様に教養教育と捉え、「ヒトが生きていく上で必要な、正しい倫理観と道徳観を兼ね備えた金融の知識を教えること」と定義する。しかしわが国では金融教育を行うことが可能な教師が不足している。そこで教師の育成のために、まずは大学をはじめとする高等教育機関において金融教育を充実させる必要がある。それは教員養成のための教職課程に限らない。というのも、金融教育は学校教育に限らず、社会教育にも必要であるからである。地域コミュニティにおける金融教育では、各地域において金融の勉強会等を積極的に推進するリーダーが数多く必要になる。

 

現在、一部の大学にはパーソナルファイナンスを扱う科目が存在する。しかし多くの場合はファイナンスの授業の一部として軽く扱われている程度である。また扱われている場合においても専門科目として扱われており、その目的としてはファイナンシャルプランナー資格の受験対策というように、教養教育というよりは実学教育である。しかし金融教育は大学教育だけで独立したものではなく、その内容は連続的な学習の中で学んでいくべきものであるから、全ての教育シーンで行わなければならない。以上のような考えから当論文においては、学校教育から社会教育までの体系的なカリキュラムと内容を提案した。

 

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