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Massively Multiplayer Online Systemを応用した金融経済教育の考察

竹本 拓治
京都大学

前号に掲載した問題の所在と提言を踏まえ、今号では具体的な教育手段の1つとして、多人数同時参加型オンラインのICT(Massively Multiplayer Onlineの特色)を応用した疑似体験型の金融経済教育を考察する。当教育方法は、パターン化されたプログラム応答(「1個人」対「コンピュータ」)や、一方向、双方向を共に含めたチャット、ウェブカメラ対面講義、ウェブ一斉講義(「1個人」対「1個人」、又は「1個人」対「複数」)といった既存のオンライン教育とは違い、多人数で継続性があり、かつ同時参加型の相互作用をもつインタラクティブ性が特徴である。

現実経済では効率的市場とは異なり、カオス要素や相場、株価のランダムウォークが自然発生する。本教育方法はそのような要素を含むため、現有のICT教育を超越している。本教育の実践の結果、わが国の消費者は不確実性下の予測不可能な金融経済社会における自己責任やリスクの取り方といった、金融グローバル化への対応に必要な経験を擬似的に享受することが可能になり、それは事前予防的な対応となるため、消費者問題が大幅に減少する。つまりMassively Multiplayer Online SystemによるICT教育は、わが国の消費者庁が抱える政策課題のブレークスルーとなる。

ICTツール登場自体が近年であり、Massively Multiplayer Online SystemについてはMMO-RPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game)としてデジタルゲームの中のオンラインゲーム形態で存在する。隣接または近い内容の先行研究として、教育学研究からICT教育の大学への導入に関する研究、情報学研究のアプローチとしてはオンラインゲームの歴史教育への活用研究が存在する。当論文ではMassively Multiplayer Onlineのシステムの特徴をより活かすため、科目教育ではなく金融経済教育に応用する。本教育方法の独自の効果としては以下の通りである

1 金融経済を机上の学問としてではなく、価格形成やノイズを含んだ、より現実に近い経済を、仮想空間内で擬似体験を通して学べる。

2 不確実性下の予測不可能な擬似社会において、自己の判断や行動について、リスクと自己責任が伴い、それらへの経験を養える。

3 授業実施効果をフィードバックし、その結果をオンラインで常時アップデートすることで、ノウハウの蓄積を行い質の向上を図れる。

4 チャット機能等を利用することで、疑問点を教員だけでなく、リアルタイムで学生同士共有ならびに解決を行うという、ピアラーニングになる。

 このような効果と共に、リスクを担える投資家の育成、そのことに伴うベンチャーファイナンスの活発化など、様々な波及可能性が存在する。

→英語バージョン

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