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消費者ローン現在利用者の時系列変化に関する分析 Part3
堂下 浩
東京情報大学
内田 治
東京情報大学
消費者金融専業大手7社による貸付残高はピーク時と比べて40%減の4.5兆円にまで縮小した。この背景には、2006年12月に行われた貸金3法(貸金業法・利息制限法・出資法)の改正がある。上限金利は2010年6月に29.2%から20%に引き下げられたが、貸金業者は以前より審査の厳格化を進めてきた。また06年1月に最高裁が利息制限法と出資法の上限金利の間にある、いわゆるグレーゾーン金利帯(年利20%?29.2%)を実質的に否定する判決[1]を出した。その後の法改正でグレーゾーン金利帯を完全な“黒”と追認したことを受けて過払い金返還請求が急増した。結果として、貸金3法の改正後、審査の厳格化により新規成約率は55%近傍から28%まで低下。逆に過払い金返還額の増加基調は現在も続き、06年1月の判決以来、貸金業界全体で返還した過払い金総額は少なくとも2.3兆円程度に達したと推計される。急増する過払い金返還請求は貸金業者の資金供与機能を実質的な破綻へと導いている。
貸金市場での規制強化は他の貸付にも影響を及ぼす。例えば、本調査では消費者金融の現在利用者が保有する消費者金融、銀行のカードローン、そして親族や友人からの借入残高の推移を調べた。本調査によると消費者金融会社からの借入残高は平均116万円(07年)から98万円(09年)へと減少した。一方で銀行カードローンの借入は72万円(07年)から88万円(09年)へと増加。また親族や友人からの借入は184万円(07年)から215万円(09年)に増大した。改正貸金業法で導入される総量規制[2]では、いわゆる「多重債務者」[3]の発生抑止のために消費者金融による融資が大きく制限される。しかし利用者の債務行動を見ると貸金市場への規制強化がモグラ叩き(抜本的ではない対症療法的な対策)に終わってしまう感は否めない。
[1] 平成16年(受)第1518号貸金請求事件(最高裁判所)。
[2] 貸金業者による貸し付けを原則、個人年収の3分の1までとする。なお、銀行や親族・友人からの借入は対象外。2010年6月に実施予定。
[3] 「多重債務者」に関する明確な定義は存在しない。例えば、金融庁と日本弁護士連合会が定義する「多重債務者」は異なっている。