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高等学校におけるパーソナルファイナンス教育に関する一考察
大谷和海
京都文教高等学校
金融機関を利用してモノやサービスを購入する人びとの中には、多重債務や自己破産に直面し、挙句の果てには自殺にまで追い込まれるというケースが増加している。しかし、金融問題に関する啓発活動の実態はその問題の大きさに比べて小さく、事後対応が主となっている。そこで、パーソナルファイナンス教育の実践により、こうした問題を少しでも解消できないかと考え、本研究に取り組むこととした。
借金などの金融トラブルに関してみれば、例えば法整備などで規制を強化することによって多重債務の解消等の効果があるかも知れないが、あくまでも対症療法的なものであり、根本的には国民一人ひとりが健全・適正な家計管理を行うことが重要である。そこで、学校教育の場においてパーソナルファイナンスが十分に扱われていない点を検定教科書の記載内容から明らかにし、その課題を考察することが本研究の目的である。
特に、高等学校における金融教育を捉えた時、現状では金融政策などのマクロ経済分野を扱うことが中心である。しかし、トラブルを回避するためには、消費生活をする私たちにとって、計画的な利用などの家計管理や資産運用に関しての自己責任意識を育む金融教育、つまりパーソナルファイナンス教育が必要である。しかし、実際は平成11年改訂の学習指導要領やそれを受けた現行の検定教科書を検証した結果から、パーソナルファイナンス教育に関する記載はほとんどなされていないことが判った。また、先行研究においても、高等学校の教育内容を扱ったものは国内においては見あたらない。そこで、まず実情を勘案しながらパーソナルファイナンス教育の内容を段階的・体系的に構築することが望まれる。
平成21年改定の学習指導要領では、公民科において金融制度などに関する学習や消費者に関する学習が、家庭科においても生涯賃金や働き方、年金などとの関係に関する指導などが加えられ、生活を総合的にマネジメントする内容の充実がはかられた。これを受け、行政が主導的立場を取り、わが国の現状を勘案し、情報集約も含めた金融教育の内容を段階的・体系的に構築する必要があると考える。加えて、いかに教材開発や教科書内容の充実に取り組んでも、担当教員がその内容を適性に取り扱えなければ意味がないため、教員の再教育も必要だと考える。そのうえで、キャリア教育の一環として取り扱うことも含めて意見提言を含めて考察する。