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パーソナルファイナンス会社の社会貢献活動と今後
-東日本大震災を契機に考える-

佐伯 隆博
アコム株式会社

2010年9月の経団連「企業行動憲章」の改正、2010年11月のISO26000の規格化など、企業の社会的責任要求が高まる中で発生した「東日本大震災」は、パーソナルファイナンス業界および各社における本業を通じた社会貢献活動について考える契機となっている。本論文は、パーソナルファイナンス会社の本業を通じた社会貢献活動のひとつであるマイクロクレジットの可能性について、国内外の事例を基に示唆するものである。
 欧米では、社会的に意義のある活動に対し融資を行う倫理銀行(イタリア)、トリオドス銀行(オランダ)などのソーシャルファイナンス金融機関や、金融弱者の生活支援、失業から抜け出すために起業する者に対し融資を行うAdie(フランス)、アクシオン(アメリカ)などのマイクロクレジット組織が存在し、社会の持続的発展に貢献する融資活動を積極的に展開している。
 日本でもNPOバンク、生協組織がマイクロクレジットを展開しているものの、信用生協など一部の組織を除いて、持続的な業務拡大は厳しい状況である。
 欧米とわが国でこのような違いがある理由はどこにあるのか。それは、政府、消費者を始めとするステークホルダーが、ソーシャルファイナンス、マイクロレジットの存在意義、社会的役割について理解をしているか否かの違いであると考える。欧米では貧困、失業対策が重要な社会問題であり、その対策そのものがCSRだと認識されている。従ってマイクロクレジットは、言わば社会公認のCSRあり、政府は法律面、金融面で支援を行い、消費者は寄付およびボランティア活動によって支援を行っている。一方わが国では、一部の悪質な業者の影響とパーソナルファイナンス業界および各社の努力不足もあり、パーソナルファイナンスの存在意義、社会的役割についてステークホルダーに正しく理解されていな
いと思われる。
 現段階では、パーソナルファイナンス会社が直接マイクロクレジットを展開することは困難である。パーソナルファイナンス業界および各社が行わなければならないことは、現在可能な本業による社会貢献活動を地道に継続するとともに、政府、消費者を始めとするステークホルダーに対し、パーソナルファイナンス業界の存在意義、社会的役割について正しく理解させ、信頼関係を築くことである。その地道な活動こそが、パーソナルファイナンス業界および企業によるマイクロクレジットを活用した社会貢献の道を開くものだと考える。


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