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2006年 消費者金融サービス研究学会年報 No.5

台湾の消費者金融サービス市場
佐伯隆博
UFJニコス(* 現在は三菱UFJニコス)


1. 消費者金融サービス事業者は、市場の飽和感及び収益性の低下から、経済成長の著しいアジア市場に新たな成長機会を求めている。

2. 台湾経済は、好調な世界経済、旺盛な個人消費、公共投資に支えられて低インフレ、低失業の安定成長を実現している。一方では、資源価格の上昇、多重債務(不良債権)の問題など不安材料を抱えている。

3. 台湾経済は、長期に渡り公営金融機関によってコントロールされ、政府による産業政策を金融面で支えることによって発達をとげてきた。

4. 1980年代後半から金融の自由化が始まり、1989年の銀行法改正によって新銀行の設立が緩和化、1991年には15行の新銀行が設立された。この新銀行法の改正が、台湾金融市場の特徴である中小の金融機関の乱立状態を生み出し、過当競争を促進させることとなった。

5. 2005年頃から金融機関によるM&Aが活発化している。主要因は多重債務(不良債権)問題によって体力を失った金融機関が、生き残りをかけ資本を受け入れているためである。

6. 消費者金融サービス市場は、1990年代を境として市場は拡大、1990年から2000年の間に市場は4倍に膨れ上がった。その後も市場は拡大を続け、クレジットカードについていえば、国民1人が1.75枚カードを保有するほど成熟した市場になった。その結果、2005年には急激な市場拡大の反動として、多重債務(不良債権)問題が顕在化、政府による規制強化もあり、市場は初めて縮小、問題も長期化することとなった。

7. 台湾、韓国における多重債務(不良債権)問題の共通点は①政府による市場介入が不適切、②金融機関の過度な競争と過剰な貸付、③審査・リスク管理ノウハウの欠如である。

8. 日本の多重債務(不良債権)問題のインプリケーションは4点、①金融機関の過度な競争を抑制、②消費者教育とモラルの向上、③審査・リスク管理ノウハウの向上、④各種規制は適正な範囲で行うことである。

9. 台湾の消費者金融サービス市場に参入することは困難である。仮に参入をするのであれば、多重債務(不良債権)問題で体力を失っているが、顧客基盤を持ち、ポテンシャルの高い金融機関に対し資本出資を行うことも一つの戦略である。

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