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2021年全国大会 7月18日 報告要約

公共組織における新たな人事管理の導入とその影響

山口大学 米岡秀眞

本研究の目的は、2016 年に改正の地方公務員法により導入された業績ベース人事管理制度に着目し、地方自治体のアンケート調査データにより「エンハンシング効果」の存否を実証的に明らかにすることにある。実証分析から、一般的に仕事に対するやりがい (内発的動機付け) を感じる人ほど職員満足度がより高まる傾向にあるが、業績ベースの人事管理制度の導入が相乗して、職員満足度をさらに高めていることが明らかとなった。

上司行動が従業員のリテンションと職場内外での行動に与える影響「職務への埋め込み」が果たす媒介効果の可能性

兵庫県立大学 高階 利徳
大阪大学 開本 浩矢

本報告では「職務への埋め込み(Job Embeddedness)」に関する実証的な分析を試みる。 データを統計的に検証したところ、職務への埋め込みは家族支援的な上司行動で促進されることが明らかとなった。 また職務への埋め込みが従業員の職場内での態度・行動および職場外での行動をも正しく予測することが示された。 さらに職務への埋め込みが、上司行動と緒結果を結ぶ媒介変数としての機能を果たすことも 追加的に確認された。

地方公務員の職員満足度に関する実証分析職員満足度調査データによる分析

京都先端科学大学 小川顕正
京都先端科学大学 跡田直澄

本研究は、地方公務員の職員満足度、 特にワーク・ライフ・バランスに関する満足度(WLB 満足度)について定量的な分析を行ったものである。 分析の結果、男女間で統計的に有意な差は見られないものの、いわゆる「中間管理職」の WLB満足度が低いことや、「ライフ」よりも「ワーク」における モチベーションが WLB 満足度に影響していることを明らかにしている。

日本の製造業における外国人研修生の技能形成~小池「知的熟練論」の観点からみた変遷と課題~

中央大学大学院 戦略経営研究科 博士後期課程 長濱康之

外国人労働者はいろいろな問題を抱えてはいるが、日本の少子高齢化により、日本の製造業の現場では増加していくことが予想される。 彼らが「知的熟練」などの高度な技能を身につけられずに、職場で一定の割合に達した場合、小池によれば、その現場の労働生産性は著しく低下する。 日本国内における外国人に対するこれまでの技能形成制度の変遷を「知的熟練論」の観点から確認し、高度な技能を身に着けるうえでの課題を示す。

知識労働と感情労働の同時遂行が労働者に与える影響

桃山学院大学 経営学部 三輪卓己

知識労働と感情労働を同時に行う職種を取りあげ,それが労働者にどのような積極的,あるいは消極的な影響を与えるのかをインタビュー調査を通じて分析した。 自律性の向上やキャリアの長期化,多様化等,積極的な影響も多く見られたのであるが,一人で深層演技を行う仕事や職場では,消極的な影響が現れることも明らかになった。 今後の研究の方向性として,知識労働と感情労働の相互作用の詳しい分析が重要になると思われる。

戦中の地方公務員の学歴と処遇出身地を操作変数として用いた学卒効果の推定

山口大学経済学部 川村一真

本研究は 1 9 4 1年の『東京市職員銘鑑』『東京市職員録』を用いて,戦中の地方公務員の賃金に学歴がどのような影響を与えていたのか検討する. 近年,人事記録を用いた同様の実証研究の蓄積が進むが,推定に内生性の問題が存在する.本研究は,出身地を学歴の操作変数とした推定を行う. その結果,最小二乗法(O L S )では 23%であった学卒プレミアムは 2 段階最小二乗法( 2 S L S )では 4 2 %であり,O L S の過少推定の可能性を示す.

転職と雇用制度 -米系大手多国籍企業日本法人勤務経験者のインタビューを通じて

慶應義塾大学商学部 八代 充史

本研究の目的は、転職と中途採用の多寡によって大企業の雇用制度を ①人材還流型 ②人材輩出型 ③人材拡張型 ④日本的経営型、 の4つに類型化して、それを規定する要因を明らかにすることである。 本報告では、上記4類型の中で、米系大手多国籍企業日本法人勤務経験者のインタビューによって人材還流型について検討し、 この点を踏まえて企業の雇用制度類型間の移動を通じた日本的雇用制度変化の可能性を考えたい。

企業家活動とサイコロジカル・キャピタルに関する研究―女性企業家の事例の定性的分析から―

大阪商業大学 専任講師 辺見佳奈子

本稿は 10 名の女性企業家への調査から、企業家はサイコロジカル・キャピタル(以下、サイキャップ)の 4 要素(自信・挑戦力・楽観性・レジリエンス)を有することを解明する。 サイキャップでは 4要素が個人の成長を導くとするが、挑戦力とレジリエンスが企業家活動に不可欠である点は Sarasvathy(2008)がすでに論じている。 ゆえに、本稿の貢献は企業家活動において挑戦力とレジリエンスを含む 4 要素の必要性を示す点にある。

従業員の向社会的モチベーションが知識共有および知識隠蔽に与える影響―動機の自律的・統制的側面の観点から

一橋大学 Shin Hayoung
一橋大学 島貫 智行

本研究では従業員の向社会的モチベーションに着目し、自己決定理 論に基づいて向社会的モチベーションに自律的側面と統制的側面があることをふまえ、 これら二側面が知識共有と知識隠蔽に与える影響について検討した。 日本企業のフルタイム労働者を対象とした3 時点の質問票調査データを用いて分析した結果、 自律的側面は知識共有を促し知識隠蔽を抑制するのに対し統制的側面は知識隠蔽を促進させると予想した仮説が支持された。
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