国際ビジネス研究学会 会長挨拶
会長就任のご挨拶
白木前会長の後を引き継いで、これから3年間会長を務めさせていただくことになりました。 歴史のある国際ビジネス研究学会の会長として、どのようなかじ取りをしていけばよいのか、大きな責任を感じております。 私としては、本学会のみならず、日本の学会が直面している課題として、以下の3つを認識しており、 この課題解決に資する活動を推進していきたいと考えております。
第一の課題として、短期的にはコロナ禍がおさまったあとの学会活動の在り方、その見直しということがあるかと思います。 コロナ禍でオンラインによる部会や大会を実施した経験から分かったことは、オンラインでもできること、 オンラインだからこそできることがあるということです。 たとえば、オンラインだと海外の研究者による発表を比較的容易にお願いすることができるとか、 地域の枠をこえて部会に参加できるといったことです。 もう一方で対照的にわかったことは、オンラインだと、新しい繋がりや人的なネットワーキングが難しいということです。 来年度の全国大会は対面での開催が可能になるのではないかと、多くの会員が期待しているところでしょう。 これからは、対面とオンラインをうまく組み合わせて、学会を運営していくことが重要であると考えます。
第二の課題は、日本というローカルな学会の活動をどのように意味付けしていくかという点です。 研究のグローバル化が進む中で、多くの会員が海外の国際学会で研究発表をしたり、 海外ジャーナルに論文を投稿したりすることが増えています。 このこと自体は、日本人研究者のグローバル化を進めるうえで、たいへん喜ばしいことではありますが、 それが主流になっていくと日本の学会はそもそも必要なのかという疑問が生まれてきます。 そういった中で、昨年の関東部会では、「日本で研究しているからこそできる研究や研究アプローチ」などついてあらためて考え、 そういう研究を世界に発信していく、というテーマを取り上げたことがあります。 本学会として、そういった発信をすることがその存在価値として重要ではないかと思います。
第三の課題は、会員数の減少への対応、若手の研究者の育成確保の問題です。 会員総会でも報告されましたが、当学会の会員数は減少しており、白木前会長のときから、この問題への対応は議論されてきました。 こういった現象は、おそらく多くの日本の学会が直面しているのだと思います。 日本の人口が少子高齢化に向かっている一方で、現役から退かれるシニアの先生が増えているわけです。 とりわけ、私が心配なのは、人口が減っている以上に研究者になりたいという人が減っているのではないか、 博士課程への進学率が下がっているのではないかということです。 若い人にとって、研究者になることが魅力的でなくなっているとしたら、我々はその流れを変える必要があります。 研究をすることの社会的価値や研究の面白みや醍醐味を若い人たちに伝えていかなければいけないし、 そういった環境を自ら作っていかなければいけないでしょう。
これらの課題は、どれも容易に解決できるものではなく、魔法の一手があるわけではないと考えています。 いろいろな試みと活動を地道に積み重ねて実行していくことが必要なのだと思います。 会員の皆さまのご協力をぜひお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
2021年12月
会長 新宅純二郎(東京大学)
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