今後わが国の自治体は、行政自らが漕ぎ手であったオールド・パブリック・アドミニストレーションから、舵取りとして効果的な行政経営を実践するニュー・パブリック・マネジメント、そしてすべてのステイクホルダーを巻き込んで協働し、最適なパブリックサービスの提供を実現するニュー・パブリック・サービスへと進化する方向性を明確に指向することが必要です。市民社会におけるこの地方政府機能の進化に向けて、調査研究に基づく叡智を結集し、それらの理論と実践とを統合して、現実の問題に対する支援を行うことが当プロジェクトの目的です。
現在わが国の自治体は、地方分権の推進にともなう多様な行政サービスの提供、住民のサービスニーズの高まりと財政の逼迫という厳しいコンフリクトに直面し、マネジメントシステムという観点からその財政運営を抜本的に見直す必然性に迫られています。
多くの自治体が、行政評価、事務事業評価を財政運営に組み込み、効率的かつ適正な資源配分と住民ニーズに応じた有効なアウトカムの達成に向けた改革に取り組んでいますが、その改革努力が目に見える成果を獲得するに至っていないこともまた事実です。この根底には、既存の財政運営を変革するために解決すべき問題が複合的かつ重層的に錯綜して存在している現実があります。
すなわち、予算・決算によるフロー管理に依存し、長期的な資本計画を設定する基礎となるストック情報が決定的に不足している、業績評価情報を効果的に計画にフィードバックするPDCAサイクルが機能していない、これまでの業務システム、組織構造を効果的に変革する強力なドライバーとなるリーダーシップが効果的に発揮されえない、住民の視点に立った行政活動の重要度に基づくプライオリティを予算編成に効果的に設定できないなどの困難な問題を指摘することができます。
しかも問題解決へのさらに大きなバリアは、これらが個別の問題として解決できるものではなく、行政自体のマクロ的なマネジメントの視点からシステマティックに解決する必要があるということにあります。この意味で財政運営の改革に伴う問題はまさにきわめてクリティカルであり、政府が、市民の拠出する資源を適切に配分し、その業績を評価し、さらに計画に対して効果的にフィードバックを行って、受託責任を十全に果たすためには、いかなるシステムが求められるのか、という困難な問いに対する最適な処方箋は、個々の自治体の改革努力を超えるものといえるでしょう。
本研究プロジェクトは上述の問題認識に基づき、わが国の地方自治体が直面する行財政改革の諸問題に対し、いかに効率的かつ効果的に住民の視点によるパブリックサービスを提供するかについて調査研究を実施し、調査研究による知見を蓄積するとともに、それらを広く自治体に啓発啓蒙し、行財政改革の進展に寄与することを目的とします。
多くの地方自治体関係者が参集する公共経営研究科から「行財政改革のための知の発信」を行い、「知と実践の協働」による行財政改革の進展を目指します。
本プロジェクトのミッションは、わが国の地方自治体が行財政改革を推進し、住民の視点によるパブリックサービスを効率的かつ効果的に提供する能力を構築することに、理論および実践の両者を通じて支援する、わが国の行財政改革推進に向けた理論を結集し、積極的な『知』の発信基地として、行財政改革に関わるすべてのステイクホルダーの協働を推進する媒体となる、今後わが国の自治体は、行政自らが漕ぎ手であったオールド・パブリック・アドミニストレーションから、舵取りとして効果的な行政経営を実践するニュー・パブリック・マネジメント、そしてすべてのステイクホルダーを巻き込んで協働し、最適なパブリックサービスの提供を実現するニュー・パブリック・サービスへと進化する方向性を明確に指向することが必要です。市民社会におけるこの地方政府機能の進化に向けて、調査研究に基づく叡智を結集し、それらの理論と実践とを統合して、現実の問題に対する支援を行うことが当プロジェクトの目的です。